カタールのメディア事情

2013/1/24 Thursday
Charlotte Sharwin, PR Director Zed Communications
 カタールは、世界で最も小さな国の一つでありながら、最も裕福な国家です。近年、国際舞台において注目を浴びる国のひとつとして存在感を強めています。

居住者はわずか170万人、そのうちカタール国籍の国民は30万人の小国でありながら、1人当たりの国民所得では世界ランク第一位を誇ります。

こうした裕福さがあるにも関わらず、カタールのメディア業界はまだ発展の過程にあり、海外メディアのハブとして発展している隣国UAEに比較すると、非常に基礎的なレベルと言えます。急速に変化・発展を遂げているカタールでは、他の分野に比べメディアは遅れを取っているようにも見えます。

しかしながら、急速にグローバル国家としての歩みを進めているカタールの現状を考えると、膨大な人的、資金的な努力によって、そう遠くないうちに、国際基準にのっとったメディア基盤が形成されると期待されています。とりわけ後述するアルジャジーラは、例外的ともいえるほど、他に先駆け発展をしているメディアでもあります。

実はカタールでは、1960年代まで自国内で発行されたプリントメディアが存在せず、エジプトやレバノン、またバーレーンといった国外からの輸入出版物に依存していました。ある意味、カタールは孤立主義国家とも言えるかもしれません。

こうした状況に変化が訪れたのは1978年のことでした。当時の情報省がGulf Publishing and Printing Companyに対し、後の「Gulf News」第一版となる英字新聞を発行することを認めたのです。「Gulf News」は、現在も33,000部の発行部数を誇る人気紙で、ここへきてブランドイメージの転換を図っており、今後さらに期待が寄せられています。

その他の英字紙では、「Quatar Tribune」 (発行部数 13,000部)と「The Peninsula」(15,000部)の2紙がしのぎをけずっていますが、発行部数という点では、「Al Arab」(22,000部)、「Al Raya」(45,000部)、 「Al Sharq」(65,000部)、「Al Watan」(23,000部)など、アラビア語新聞の方が人気を集めています。

新聞に比べ雑誌の存在感はまだ弱いのが現状ですが、一部のファッション誌やスタイル雑誌、またNYで人気の高級誌などが登場しはじめています。COMAG社(コンデナストおよびハーストが出資)が発刊する中東初のグローバルファッション誌「Haute Muse」などは、その一例です。

そして、カタールのメディア業界の中心は、なんといっても6大陸に60以上の支局を持ちグローバルニュースを提供している英語版ニュース局「アルジャジーラ」でしょう。2006年の開局以来、他局がカバーしていない地域からのニュース報道によって、配信エリア、視聴ともに拡大し続けています。現在、130国、2億5000万を超える世帯で放映され、ジャーナリズムに対する姿勢から数々の賞も受賞しています。その中には、RTS News Channel of the Year、Feesat Best News Channelも含まれ、また昨年には、Columbia Journalism賞、a DuPont賞、 a George Polk賞にも輝いています。

残念なことに未だぱっとしないカタールのメディア業界を尻目に、アルジャジーラだけは、より一層の発展を遂げているのです。これについては、カタールの富と国際化の波によって、数年の後に他のカタール国内メディアが大きな発展を遂げてくれることを願うしかありませんが。

今、注目されているのは、他国に違わずデジタルの波です。昨年カタールの大型ショッピングモールで起きた火災では、19名の命が犠牲となりました。犠牲者の多くが子供であったことから、大変な悲劇を生み、また同時にこの事故は大きなニュースとなりました。このとき、カタール国営メディアの報道は迅速さにかけ、情報が十分でないことで多くの批判を受けましたが、それに代わって、デジタルメディアは事故の詳細を逐一伝えることで、その地位を確かなものとしています。

最後になりますが、カタールにおけるメディア事情は残念なほど発展途上にあります。常に自国を再建させ続け、権力と資源を有する国である以上、こうした現状がすぐに変わらないとしてもさほど驚くことではないのかもしれません。