苗場で思う、夏フェスの可能性

2011/8/05 Friday
エグゼクティブ ディレクター 伊藤 みき
フジロックフェスティバル '11 今年の夏、苗場まで Fuji Rock Festival 2011を観に行ってきた。

このフジロックを含め、いわゆる「夏フェス」は、全国で大小100以上が開催され、お馴染みの夏のイベントとなっている。しかし、観客動員数からすると、主要な大規模フェスでは2006年、2007年のあたりがピークで、それ以降は減少もしくは同レベルの維持にとどまっている。低迷する景気も動員数に影を落とす。そして、追い打ちをかけるように今年は震災、原発事故だ。経営的には夏フェスを取り巻く環境は厳しい。

それでも、今年のフジロックに行ってみて、これからの夏フェスの可能性を垣間見ることができたように思う。

ひとつは、運営が年を追うごとにスムーズになっていること、参加する側もフェスの特長を踏まえた現地での過ごし方がこなれてきていることがある。ふたつ目には技術の後押し。たまたま観たステージで新しいアーティストを好きになる、というフェスならではの楽しみが、スマートフォンなどの利用で増幅する。例えば30年前に空前のテクノブームをけん引したYMO。私のようなオジサン・オバサンの興奮ぶりもあってか、ステージが終わってから若い人たちがスマートフォンを覗き込んで、へえ、そんなにすごい人たちなんだ、などと話していて、こちらもちょっと嬉しくなった。

最後に、3日間で12万人を動員するイベントには、やはりコミュニケーション・ツールとしての価値がある。苗場のような緑に囲まれた会場は、環境のこと、エネルギーのことを考えるには格好の場所だ。雨の中でゴミ分別や清掃をしてくれるボランティアスタッフにも頭が下がる。そして何より、アーティストの一人の言葉が心に残る。

「今年もフジロックが無事に開催できたことに、本当に感謝したい。」

多くの人のあたりまえの生活が一瞬のうちに失われた大震災。あの会場にいた人すべてが、同じ気持ちを共有したに違いない。

夏フェスが、単に好きなアーティストを観に行くだけでなく、音楽でもなんでも、何かを共有したり、新しい発見をしたりできる場所になり、もっともっと成熟したイベントになっていくことを期待したい。